『厭な物語』

今年16冊目の本を読了〜☆


厭な物語 (文春文庫)


『厭な物語』


バッドエンドや後味の悪い短編を集めたアンソロジー
もともと小説でも映画でも「厭」な物語は大好きなので、本屋で見かけて衝動買い!


「崖っぷち」アガサ・クリスティー
「すっぽん」パトリシア・ハイスミス
「フェリシテ」モーリス・ルヴェル
「ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ」ジョー・R・ランズデール
「くじ」シャーリイ・ジャクスン
「シーズンの始まり」ウラジーミル・ソローキン
「評決 ある物語」フランツ・カフカ
「赤」リチャード・クリスチャン・マシスン
「言えないわけ」ローレンス・ブロック
「善人はそういない」フラナリー・オコナー
「うしろをみるな」フレドリック・ブラウン


まず全体的に思ったのは…
人が死なないと「厭」にはならないのかなぁ?
どの作品も必ず誰かしら死ぬのよね。。。
(「くじ」は最後死んだのか分からないけど…)
「死=厭」ってあまりに安直すぎる気がする。
人が死ななくても「厭」な気分になれる作品ってないのかしら。


あとは、「厭」の種類もいろいろってこと。
この本では、不条理な物語や、最後にはっきりとしたオチがない物語を、
「読んだあとモヤモヤする(消化不良)」=「厭」ってことで収録されているようです。
個人的にはそういう「厭」は好みじゃないんだよね。。。


そんな中、私がおもしろいと思ったのは「崖っぷち」。
最後にちゃんとオチがあって、しかも二段オチ。
こうなるのかな〜?っていう予想を裏切られ、さらにその先で予想外のラストが待ってる。
もちろんハッピーエンドじゃないんだけど、私の好きな「厭」でした。


それから、衝撃的だったのは「赤」
たった4ページの作品なんです。
それであれだけの衝撃を与えられるなんて…
「厭」というか、とにかく「ゾッと」します。
今年一番の衝撃かも(笑)


この作品で注目したいのは、絶対に映像化はできない、ということ。
これは文章だから成立するんです。
紙とインクだからこそ生み出せる世界。
そういう点でも、とてもすごい作品だと思います。


それと同じことが言えるのが、最後の「うしろをみるな」
これも本という形でしか存在しえない作品ですね。
しかも読者がいつの間にか物語の中に加えられているという…
たしかに読み終わったあと、怖くなって窓の外とか確認したくなる(笑)
おもしろかったんだけど、ひとつ残念なのは、この話が解説のあとに収録されていた点。
ふつうに一番最後に収録したほうが、ずっと怖さが増すと思うのに。
わざわざ最後の最後にもってきたら、いかにも「あとから付け足しました」感が出て、読んだあと萎えるんですけど。


そんなわけで、最後まで「厭」な小説でした(笑)